失語症について
・大脳の、言葉に関する働きを司る言語中枢が損傷されたために、一度は正常に獲得された
言語機能がうまく働かなくなる高次脳機能障害の一種です。
聞く・話す・読む・書くことに関する能力が低下しますが、失語症の種類により
これらの症状の現れ方や程度が異なります。 失語症のある人が経験していることは、
「言葉が分からない国に放り出された状態」に例えられ、ある日突然以下のような
状態に置かれることとなります。
・失語症のある人の脳で起こっていること
人が話すとき、言語中枢が内容に適した言葉を選び、体の器官を動かす指令を出す
運動中枢に伝えます。そして、運動中枢が舌や声帯など発話に関わる器官を動かす
指令を出すことで、言葉が出ます。
失語症では言語中枢が損傷を受けているため、言語中枢が言葉を組み立てて運動中枢へ
指令を出す過程がうまく機能しなくなります。このため、ものの意味は分かるのに
言葉が思い出せない状態になることが多いですが、
認知や思考の能力は比較的良好に保たれています。
・失語症の原因
失語症は、大脳の言語中枢の損傷により起こります。言語中枢が損傷される原因の90%以上が、
脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などの脳卒中です。
脳卒中を起こす人の多くは中高年であるため、失語症のある人も大半が中高年です。
ほかには、交通事故などによる頭部外傷や脳腫瘍などがあります。
・失語症の種類
- 話すことの障がい
全く話すことができない場合から、日常会話は問題がなく複雑な会話は難しい場合まで、
症状の程度が異なります。
- 聞くことの障がい
他人が話す言葉の音は聞こえていても、言葉の意味が理解できない状態です。
全く理解できない場合から、日常会話は問題なく複雑な会話や長文になると
難しい場合まで症状の程度が異なります。
- 読むことの障がい
文字は見えているのに意味が理解できなかったり、音読することができない、
読み間違いである「錯読(さくどく)」などが起こる状態です。
- 書くことの障がい
文字が思い出せない、書き誤る「錯書(さくしょ)」などが起こる状態です。